Rafael Nadal Full Throttle | In The Groove

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a beautiful tomorrow yea

分析的な考え方をするホアン・フォルカデス(ナダルのトレーナー)は、「ラファが成功できたのは、一つ一つの要因を合わせた以上の成果が生まれたからだ」と考えた。「才能を開花させるプレーヤーもいれば、そうでないプレーヤーもいるのは、ポップコーンを作るようなものだ。はじける粒もあれば、そうでない粒もある。ラファの粒はなぜそんなに見事にはじけたのだろうか?」と、フォルカデスは問いかける。その答えの一番のカギは、脚や腕ではなく、つまりフォルカデスが「身体の中でもっとも傷つきやすいところ」と呼ぶ部分、特にテニスのような個人競技のエリートたちの中で勝敗を分けるのにもっとも重要な部分だ。

 

テニスは長時間にわたって次から次に起こる緊急事態を解決していくものだ。瞬時に判断し続けるプレーヤーが、他より抜きん出て、何度もチャンピオンになれるのだ。瞬時に決断するには冷静な頭が重要で、冷静な頭は情緒的に安定していないと維持できない。これがラファの持つ才能の中で特に重要な資質だ。何時間も警戒態勢を維持できるラファの能力は、ほとんど超人的だ。これがすべてのカギだ」

 

ナダルが人生において大事にしている「継続性」は、エリート・アスリートの間ではほとんど見られないとフォルカデスは言う。「彼には、グランドスラムの決勝の大きな期待ととてつもない不安に満ちた環境で、結果を予測して瞬時の判断を下すのに必要なメンタルの強さがある。つまり、一人の人間としての面アスリートとしての面は別々のものではなく、人間性が何よりも重要だ。ラファは素晴らしい家族に支えられ、人間的に優れているため、成功できたのだ」

ジョン・カーリン著『ラファエル・ナダル 自伝』より

 

人間には、三種あると思う。天才、秀才、凡才と。

けっして、秀才や凡才を軽蔑しているのではない。

ただ、ちがう、と言っているだけである。

―塩野七生

 

アヴィーチーよ、永遠に。Rest in Peace.

 

 

復帰した赤土の王者<ラファエル・ナダル>が好発進 

54日に全米公開されるシャーリーズ・セロンの新作も気になる昨今、シネスイッチ銀座で先日劇場鑑賞したダイアン・キートン主演の映画「ロンドン、人生はじめます」の感想でも綴ろうかと思ったが、2018年のテニス・ワールドツアーは早4か月が過ぎ、今後もクレーコートでの大会が目白押しだ。ナダルは、今年1月に開催された4大大会のひとつITF2000全豪オープン」(1/151/28)の準々決勝で足の状態の悪化により途中棄権を余儀なくされ、2か月以上の休養後、デビス杯での復帰を経て、ATP1000モンテカルロ・マスターズ」(4/154/22)及び同500バルセロナ・オープン」(4/234/29)に2週続けて出場した結果、両大会ともにそれぞれ5戦全勝、すべて圧倒劇でのストレート勝利を収め、ともに「V11」を飾った。

 

まず、前者を総括すると、ナダルはベデネ(対戦当時の世界ランキング53位)、カチャノフ(同40位)、ティエム(同7位)、ディミトロフ(同5位)、そして錦織圭(同39位)を撃破しての優勝だったが、5戦すべてが勝負にならず、ナダルの圧倒的な強さだけが際立った大会となってしまった。

 

次いで、後者を総括すると、ナダルはカルバレスバエナ(対戦当時の世界ランキング75位)、ガルシアロペス(同75位)、クリザン(同140位)、ゴフィン(同10位)、そしてギリシャ19歳の新星チチパス(同71位)を撃破しての優勝だったが、同大会での対戦もすべて勝負にならず、改めてナダルの強さだけを世界にアピールした大会となってしまった。付け加えるなら、準々決勝で対決したスロバキア28歳のクリザン元世界ランキング24)が一番手ごわい相手だったように、俺の眼には映ったが、彼は同大会後、バルセロナからドイツのミュンヘンへ移動し、同250BMWオープン」の予選で2試合勝利し、本戦へ進み、昨夜行われた1回戦でドイツのマイヤー(現世界ランキング72位)に2-1のスコアで逆転勝利を飾っている。

 

なお、同大会には、4大会連続(ATP250~)初戦敗退の杉田祐一くん(同46位)をはじめ、同250ハンガリー・オープン」(4/234/29)で予選敗退後、ラッキールーザーとして本戦に挑み、見事優勝を飾ったイタリア25歳のチェッキナート(同59位)、同1000BNPパリバ・オープン」(3/73/18)の3回戦で棄権して以降の試合となるフランス31歳のモンフィス(同40位)、シュワルツマン(同16位)、バウティスタアグート(同14位)、ズベレフ弟(同3位)、そして同1000モンテカルロ・マスターズ2回戦敗退のフォニーニ(同19位)等々、下位大会だとはいえ、興味深い選手が勢揃いしている。フォニーニの初戦は、先述した同郷のチェッキナートだ。

 

ATP250ツアー(クレーコート3大会が同時開催(4/305/6

BMWオープン>ドイツ・ミュンヘン

イスタンブル・オープン>トルコ・イスタンブル

エストリル・オープン>ポルトガル・エストリル 

 

ともにプロテニスの世界は現在、クレーシーズン真っ只中となっているが、男子のATP250ツアーのクレー3大会について。

 

BMWオープン」に関しては、先述した通りであり、イスタンブルOP」で、上位選手の出場はシード枠のチリッチ(同4位)のみで、1回戦免除の残り3名のシード勢は、「ハンガリーOP」ベスト4セッピ(同48位)、同ベスト4ベデネ(同63位)、4大会連続初戦敗退のジュムール(同32位)であり、誰が優勝しても不思議ではないくらいに、オマケのような大会だとも言えよう。付け加えるなら、ダニエル太郎くん(同114位)が「イスタンブルOP1回戦を昨夜戦い、マテオ・ベレッティニ(同102位)に勝利し、2回戦(VSベデネ)進出を決めた。

 

エストリルOP」は、「イスタンブルOP」とは対照的に、予想外に強豪選手が集まっており、面白い大会になりそうだ。1回戦免除のシード勢4人は、アンダーソン(同8位)をはじめ、カイル・エドモンド(同23位)、ジレ・ミュラー(同28位)、カレノブスタ(同11位)であり、他にはアルベルトラモス(同41位)、ハーセ(同43位)、マイエル(同45位)、メドベージェフ(同50位)等々も参戦しているが、最も注目すべき点は、「バルセロナOP」準優勝のギリシャ19歳のチチパスの参戦だろうか。

 

データで見る<天才>と<秀才>の明らかな違い 

ところで、日本人の中では最強のテニス選手<錦織圭>くんが、「モンテカルロ・マスターズ」で初の決勝進出を決めたのは記憶に新しいが、その決勝戦ではナダルに圧倒され、無残にも6-3, 6-2でストレート負けを喫した。日本メディアの偏った報道をはじめ、錦織君の一部の盲目な熱狂的なファン達のSNS(ツイッター等)での「クレーコートでナダルに勝てるのは錦織だ」等の戯言を度々目にするが、参考までに、テニスに無知な人のために、ナダルと錦織の年度別のそれを簡単にまとめてみた。比較すること自体、バカらしいとは思ったが、金融の世界と同じで、正確なデータを知らずして、物事は冷静に判断できないものだ。錦織くんは、過去12年間でタイトルを11獲得しているが、それはすべてATP250及び同500での優勝であり、ATP1000マスターズ及び四大大会での優勝は過去1度もないのだ。ナダルは2005年(18歳~19歳)の1年間だけで11ものタイトル(全仏優勝を含む)を獲得した一方、錦織は過去12年間でわずか11のタイトルを獲得したにすぎないのだ。

 

一方、ナダルは「グランドスラム」優勝16(準優勝7)、「ATP1000マスターズ」優勝31(準優勝15)、「500大会」優勝20、「250大会」優勝9、そして「オリンピック(2008年北京)」優勝1合計77回もの優勝を飾っている、史上最高のテニスプレーヤーであり、クレーコートでの連勝記録は81を誇る異次元のクレー・キングでもあるのだ。俺はテニスファンとして、最高の選手の、最高のプレーを観たい、ただそれだけ。

 

最後に 

ミシュランガイド掲載の三ツ星レストランは「そのために旅行する価値がある卓越した料理」だと定義されているが、

進化し続けるナダルのテニスの試合もまた、シャンパン片手にとりわけ夜更かししてまでも観る価値があり、「そのために旅行する価値がある卓越したテニス」なのかもしれない。彼の今後の活躍がますます楽しみになってきた。

 

Vamos, Rafa!