私は一貫して「PUNK」=反骨精神というテーマを表現することを心掛けてきたと思う。ずっとそれをコレクションで表現し続けているし、繋がっているものだと思います。例えば動物で、突然変異で白いものが生まれることがある。ヒョウとかトラとか。高貴なる動物を見たときの驚きは強いものです。そう、一種の神秘です。表現したかったのはその白なのです。はじまりの色、そこから旅のように白の世界をめぐる冒険がはじまる。コレクションはライブです。その時間、誰よりも自分らしく生きてほしいと思っているのです。コム デ ギャルソンを着る喜びを感じてほしいというだけです。服はその人それぞれの物語を生きているのです。
テクニックは駄目で、思想、哲学をきちんとしないとね。テクニックではなく大切なのはディレクションです。前のものをなかったことにしてはじめる。価値観の否定です。新しいもの、見たことがないものへ。違う表現をしたいです。権力と戦う戦士、恐竜が仮面となって街を闊歩するといいわね。白の衝撃。過去に向かうのではなく、今ここから未来へ向かう。それが快感になるといい。
―川久保玲(雑誌「SWITCH Vol.36」6月号のインタヴュー記事より)
平成ラストサマー(平成最後の夏)
ブログ冒頭、パリ・ファッション・ウィーク(2018年1月19日)で披露されたコム・デ・ギャルソン・オム・プリュス2018年秋冬の「WHITE SHOCK(白の衝撃)」というテーマに関するロング・インタヴューから一部抜粋したが、82年の「黒の衝撃」から36年もの歳月が経過し、89年1月8日(デヴィッド・ボウイの誕生日)から始まった元号「平成」が、来年4月末で終了するが、平成最後の夏がもうすぐ終わる。
そんな平成ラストサマーも、俺は変わらず、帰宅後はテニス観戦を楽しんでいるが、テニス界のスーパースター<ラファエル・ナダル>という天才の物語の続きを追っており、彼のテニスの冒険以外にも、俺が注目しているのは、「反骨精神」を持ったハングリーな10代の選手たちであり、ナダルが10代だった頃に「テニス界に与えた衝撃」にも似たそれを期待しているのだ。そう、新しいもの、見たことがない、そんな強い選手の登場を俺は心待ちにしているのだ。
21歳以下の若者が活躍した
ATP500「シティ・オープン」(ワシントンD.C.)
今月5日に幕を閉じたATP500「シティ・オープン」本戦には48人が出場し、ベスト4に勝ち残った選手は皆21歳以下という、テニスの新時代の到来を予感させるような大会だった。21歳のズベレフ弟(大会当時の世界ランク3位)、19歳のチチパス(同32位)、20歳のルブレフ(同46位)、19歳のデミノー(同68位)の4人だ。決勝戦では、2年前にブレイクした21才以下の若手No.1ズベレフ弟がデミノーを下し、優勝を飾った。
天才<ラファエル・ナダル>
ATPマスターズ1000「ロジャーズ・カップ(トロント)」V4
ATPマスターズ1000のタイトル獲得数33(歴代No.1)
続くATPマスターズ1000「ロジャーズ・カップ」(8月6日~12日)には、(フェデラーを除く)トップ10選手が勢揃いし、本戦には56人が出場し、今年はトロントで開催された。ナダルは「ウィンブルドン選手権」(7月2日~15日)以来の実践となった。
トロントに昨年オープンしたデザイナーズホテル「Bisha Hotel(ビーシャホテル)」でのナダルの会見が未だ記憶に新しい。
そして同大会の決勝では、ギリシャ20歳の超新星チチパスに危なげなく勝利し、「ロジャーズ・カップ」V4を飾った。
天才<ラファエル・ナダル>とBIG4そして次世代等々との比較
19歳の夏、彼らのランキングは?
先述したATP500「シティ・オープン」は、“Next Gen(次世代)”と形容される21歳以下の選手たちがベスト4に勝ち進むという、近年稀に見る珍しい大会となったわけだが、今回「BIG4」と「次世代(21歳以下の5名)」、そしてその他の3名を加えた計12名の19歳当時の夏時点における世界ランキング及び現在のランキングを簡単にまとめたので参考にしてほしい。
天才ラファエル・ナダルはすでに17歳の夏には、すでに世界ランキング2位につけており、もし5歳年上のフェデラー(当時のランキング1位)が当時いなければ、17歳で世界ランク1位になっていたはずだ。そして、ナダルが当時18歳(~19歳)だった2005年には、79勝10敗(勝率.887)という圧倒的な強さを誇り、正に“衝撃”とも言える驚異的な成績を残し、11ものタイトルを獲得し、グランドスラムでの優勝も飾っている。
身体能力がずば抜けている天才ナダルは別格として、19歳の夏当時の世界ランキングを見比べると、フェデラーが14位、ジョコビッチが24位、それに続くのが21歳以下の次世代No.1であるズベレフ弟が25位、シャポバロフが26位、チチパスが32位、そしてBIG4のマレーが35位につけている。
ところで、今から約1か月前となる7月17日付ブログ“Enchanted Night”の中で、『昨日、ATP最新ランキング(7月16日付)が発表され、ナダルは引き続き1位、そしてジョコビッチが10位に返り咲いたが、今後はフェデラーが後退し、「ナダル、デルポトロ、ジョコビッチ」という新<BIG3>が支配する時代が、そんな遠くない未来に訪れるはずだ。』と記したのを憶えているだろうか? 本日20日、ATPツアーの最新ランキングが発表されたばかりだが、ナダルが1位、フェデラーが2位、3位がデルポトロ、ジョコビッチが6位となっており、俺の予想通り、「ナダル、デルポトロ、ジョコビッチ」という新<BIG3>が現実味を帯びてきたのは確かだろう。
日本時間の本日早朝、ATP1000「ウエスタン&サザンオープン」決勝が行われ、ユニクロの白いテニスウェアを着たフェデラーをジョコビッチがストレートで下し、シンシナティの同大会で初優勝を飾り、「ゴールデン・マスターズ」を達成した。
一方、女子テニス界も若手選手が台頭してきており、20歳の大坂なおみちゃんの現在の低迷状態はさておき、
今夏最もブレイクした選手は、5月5日に20歳の誕生日を迎えたベラルーシのアリーナ・サバレンカちゃんだ。7月2日付ブログ“Summer has come!(後編)”の中で、彼女に関して<また、今年覚醒中のベラルーシ20歳のアリーナ・サバレンカちゃん(同45位)に私的に注目している。プレースタイルは、超ポジティヴ思考型の「超攻撃的なベースライナー」であり、プレー精度はさほど高くなく発展途上段階だが、そのビッグストロークは脅威であり、フットワークも軽く、将来がとても楽しみな選手なのだ>と記したが、彼女の成長スピードが著しく、或る意味、「サバレンカの衝撃」だとも言えよう。8月20日付最新ランキングは、大坂なおみが19位、サバレンカが25位(昨夏121位)だ。
ナダルの後継者は?
もっともっと先の話にはなるが、ナダルの後継者になり得る選手を21歳以下から選ぶとするならば、強いのが前提で、「華がある」選手であれば、カナダ19歳のシャポバロフ君と、ギリシャ20歳のチチパス君の2人に他ならない。この2人の若者とナダルの共通点を探すならば、ロン毛だという点だ。ナダルも10代の頃はロン毛だったのだ。
まず、フォームが洗練されていないチチパス君に関してだが、彼は今年クレーコートで覚醒し、ブレイクした選手であり、彼のツイッターでの発言は、或る意味、哲学的で詩的な一面も持ち合わせており、他の選手とは一線を画す面白さがあるのだ。あまり多くを語らず、黙っていれば、ミラノコレクションのモデルでも通用するルックスの持ち主だ。
一方、シャポバロフ君はナダルと同じサウスポーであり、昨年18歳のとき、ナダルに勝利し、ブレイクした選手だが、チチパスとは異なり、現代風の若者といったイメージが強く、爽やかで清潔感に溢れており、身長2mのいかつい大男たちに囲まれた男子テニス界の中では異色で洗練された存在であり、とてもスマートな印象だ。
最後に
話は変わるが、フランス料理界の天才<ジョエル・ロブション>の訃報は、アンソニー・ボーディンに続き悲しい知らせとなったが、彼の料理哲学は永遠だ。ジョエル・ロブションと言えば、1994年に恵比寿ガーデンプレイス内にオープンした『タイユバン・ロブション』に始まり、ニューヨークのフォーシーズンズ・ホテルに2006年に開業した『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション』でのディナーは生涯忘れることはないであろう、私的な美食の記憶のひとつだ。なお、2012年6月6日(水)付ブログ“Watch that man!”(テーマ: レストラン&カフェ、バー)では、ニューヨーク店の話を含め、ジョエル・ロブションに関して綴ったので、興味がある方はどうぞ。
平成最後の夏、ナダルの物語は続く。