我々が手にしているのは、時間だけだ。
―バルタザール・グラシアン(1601-1658/スペインの思想家)
どの試合も、どの練習も、それが最後だと思ってプレーしなければならない。
人生は時間との闘いだと気付いたんだ。
―ラファエル・ナダル
平成最後の夏
『全米オープン』(8月27日~9月9日)が始まる。
いよいよ、2018年最後となるグランドスラムのひとつ『全米オープン』が現地時間27日(日本時間28日)に始まる。今大会が最後の全米オープン出場となる、スペインの元世界ランク3位(現148位)のダビド・フェレールと、ロシアの同ランク8位(現106位)のミハイル・ユージニーの両者が引退を表明しており、前者は来年のスペイン大会(バルセロナもしくはマドリード)が、後者は来月のロシア大会(サンクトペテルベルグ)が引退試合となるようだ。なお、世界ランクは、8月27日付の最新ランキングだ。
前年覇者であるラファエル・ナダルの連覇によるV4が期待されるが、今大会はBIG4が久々に一堂に会する中、“Next Gen(次世代)”と形容される21歳以下の7名(世界ランク4位のズベレフ弟、同15位のチチパス、同20位のチョリッチ、同28位のシャポバロフ、同38位のルブレフ、同44位のティアフォー、同45位のデミノー)の台頭も著しく、忘れ去られたような20代後半の世代も含め、ここ数年の中で最もエキサイティングな大会になるはずだ。
今大会、男子シングルス1回戦で最も注目される対決は、以下の3試合だ。
1.スペインの英雄対決「ナダル VS フェレール」
2.2016年覇者と現8位の対決「ワウリンカ VS ディミトロフ」
3.カナダの次世代対決「シャポバロフ(19歳) VS オーガー=アリアシム(18歳)」
一方、女子は、突出した選手がいないため、誰が優勝しても不思議ではない大会となっている。優勝候補は、今季40勝以上している・・・世界ランク1位のハレプ、同4位のケルバー(元世界ランク1位)、同5位のクビトバ、同15位のメルテンスの4名が予想できるが、クビトバは先週のWTA470『コネティカット・オープン』準々決勝スアレスナバロ戦を途中棄権しているため未知数であり、クビトバを除く3名が軸になるはずだ。
アリーナ・サバレンカの夏
WTA900「ロジャーズ・カップ(8月6日~12日)」ベスト8
WTA900「W&Sオープン(同月12日~19日)」ベスト4
WTA470「コネティカット・オープン(同月19日~25日)」優勝
全米オープン(同月27日~9月9日)は?
そして40勝には満たないが、今季すでに37勝しているベラルーシ20歳の超新星<アリーナ・サバレンカ>ちゃんが、台風の目となるのは必至だろう。女子トップ10選手と比較した場合、サバレンカちゃんの勝利数37は、ハレプ、クビトバ、ケルバーに次ぐ4番目の数字であり、今月に限れば、下位の選手との試合での勝利ではなく、トップ選手を次から次へと撃破しての勝ち上がりのため、偶然ではなく、その実力は折り紙付きだ。
例えば、「W&Sオープン」では、1回戦<コンタ(元世界ランク4位)>、2回戦<プリスコバ妹(元同1位)>、3回戦<ガルシア(現6位)>、準々決勝<キーズ(現14位)>に4連勝し、準決勝でハレプ(現1位)に敗れている。なお、コンタは、WTA470「シリコンバレー・クラシック(7月30日~8月5日)」1回戦で、ウィリアムズ妹に6-1, 6-0と圧倒しての勝利(今年1番の痛快な試合)を収めるなど、今夏は絶好調の選手なのだ。
またサバレンカは、先週出場した「コネティカット・オープン」では、1回戦<ストーサー(元4位)>、2回戦<ガブリロワ(昨年覇者)>、準々決勝<ベンチッチ(元4位)>、準決勝<ゲルゲス(現9位)>、決勝<スアレスナバロ(元6位)>に勝利し、今季ツアー3度目の決勝で、ツアー初優勝を飾った。
したがって、サバレンカちゃんは、今月3週連続でほぼ毎日試合を行っており、移動(カナダ・モントリオール~米国シンシナティ~ニューヘイブン~ニューヨーク)を含め、疲労の蓄積は否めないが、今夏最も輝いているベラルーシの超新星に期待したい。サバレンカちゃんが優勝する可能性も無きにしも非ずだが、
そんな彼女と同じドローなのが、日本20歳の大坂なおみちゃんをはじめ、クビトバ、カサキナなのだ。ボトムハーフ全体では、ウォズニアッキ、キキ・バーテンス、ガルシア、コンタ、シャラポワ、オスタペンコ、キーズ、そしてケルバー等々、強豪揃いのドローとなっている。
一方、反対側のトップドロー組は、ハレプをはじめ、ウィリアムズ姉妹、ムグルサ、プリスコバ妹、スティーブンス、メルテンス、ゲルゲス、スビトリナ等々だが、私的にはスビトリナの活躍を期待している。大坂なおみちゃんにも期待しているが、彼女はメンタルの不安定さが課題であり、それが安定すれば、今春のインディアンウェルズ以来の優勝が期待できる。
全米オープン男子 トップハーフその1(32名)
このグループは、優勝候補のナダルを筆頭に、カイル・エドモンド、アンダーソン、ティエム等々が揃っている一方、
次世代のシャポバロフ、ルブレフ、そして22歳のハチャノフ等々、ベテランと若手の対決がとても楽しみなドローなのだ。とりわけ、ナダルの初戦、フェレールとの対決は必見だろう。カナダの10代対決然り、ね。
全米オープン男子 トップハーフその2(32名)
このグループは「死の組」であり、2009年覇者デルポトロ、2012年覇者マレー、2016年覇者ワウリンカの3名が揃っており、
他にもディミトロフ、ラオニッチ、イスナー、次世代のチチパスとチョリッチ、そして先週のWTA250「ウィンストン・セーラム・オープン」で優勝した22歳のメドベージェフ、チリ22歳の新星ニコラス・ジャリー(198cm)等々、勝ち上がるのが困難なドローだが、初戦の「ワウリンカVSディミトロフ」戦は必見だ。
後編に続く。