人間はおそらく地球上最も不思議な生き物だ。答えのない謎に満ちている。
“我々は誰だ?”
“どこから来てどこへ行こうとしている?”
“どうやって物事を知っていく?”
“なぜ何かを信じようとする?”
こうした無数の問いに我々は答えを探す。そして探した答えから、新たな問いが始まり、その答えからまた新たな問いが始まり、またその・・・。
だがつまるところ、問いは1つじゃないか?
そして答えも1つなんじゃないか?
―トム・ティクヴァ監督作『ラン・ローラ・ラン』より
我々は、すべての探求を終えた時、初めて出発点を知る。
―T. S. エリオット
全米オープンが、そして平成最後の夏が終わった。
夏の終わりに、今から20年前となる1998年のドイツ映画『ラン・ローラ・ラン』(日本公開は1999年)のDVDを書棚から取り出し、99年の夏、(当時住んでいた)渋谷の、ミニシアター<シネマライズ>で劇場鑑賞した同作品を、ボランジェのグランダネ・ロゼ片手に、久々に再見した。同作品は、主人公である赤毛の女の子<ローラ>がボーイフレンドを助けるため、ベルリンの街を疾走する物語なのだが、トム・ティクヴァ監督は劇中3通りの答え(解決策)を用意しており、その3パターンの物語が順番に進行していくが、2つのサッド・エンディングと、1つのハッピー・エンディングのどれが最高なのか、視聴者の好みは3通りで、その好みは十人十色だろう。
今から2週間前、全米オープン前日にブログを更新した際、誰が優勝するのか予想し、俺はラファエル・ナダルのV4に期待したが、デルポトロとの準決勝で、右膝痛で途中棄権したのは予想外のアクシデントだった。
ボールは丸くて、テニスのグランドスラムは、5セットマッチの3セット先取(女子は3セットマッチの2セット先取)で勝者が決まるが、それだけは昔も今も変わらぬ事実だ。ウィンブルドンに続き、全米オープンもまた、ジョコビッチは(色んな意味で)運を味方に優勝したが、今年完全復活を遂げたジョコビッチに勝てる選手は、(万全な状態での)ナダル以外、現段階では見当たらない。平成最後の夏が終わり、気になる9月10日付のATPツアー最新ランキングは、上位3人がナダル、フェデラー、ジョコビッチのBIG3となり、ちょうど10年前のランキングと同じになっている。
全米オープンの優勝賞金
男女共に優勝者は、(日本円換算で)賞金約4億2千万円を手にする。決勝まで進めば、全7試合を戦うことになり、優勝した場合、1試合当たりの獲得賞金は6000万円ゆえ、それは日本における大卒者の平均年収600万円の10年分に当たる。したがって、優勝した大坂なおみちゃんは同大会の賞金だけで、大卒者の生涯賃金以上のそれを得たことになる。
全米オープンで優勝した翌日、彼女はコム・デ・ギャルソンの白いドレス(「白の衝撃」)を身に纏い、ロックフェラーセンタービルの展望台「トップ・オブ・ザ・ロック」で記念撮影を行ったが、雨天のため、室内での撮影となったのは残念だった。参考までに、BIG4のうち、フェデラー、ナダル、ジョコビッチの3人は、生涯獲得賞金がすでに100億円を超えており、毎年のスポンサー収入を合わせると、1000億円に近い、莫大な資産を築いているが、この3人は、テニスの世界において、色んな意味で、特別な存在ゆえ、ここで改めての説明は不要だろう。
ところで、今年の全米オープン期間中、私的に記憶に残っているシーンは少なくないが、例えば、日本時間の8月31日早朝に行われた、Next Gen同士の対決となった2回戦『ティアフォー(20歳)VSデミノー(19歳)』の第2セット途中(3-0)、会場内で流れていたBGMは、彼らが生まれるずっとずっと前にリリースされたデヴィッド・ボウイの名曲“Let’s Dance”(1983年)だったし、
また、男子の準々決勝「ナダルVSティエム」の4時間49分にも及んだ長時間の試合中継では、ナダルの家族、幼馴染みの恋人、コーチ陣等と共に、ゲストボックス席にはハリウッドスター<ベン・スティラー>の姿が映し出されたが、ナダルを応援するその真剣な眼差しは、正にテニス少年そのものであり、彼が主演を務めた2013年の映画『LIFE!/ライフ』の劇中、デヴィッド・ボウイの名曲“Space Oddity”が流れたが、それもまた俺の記憶の中に未だ鮮明に残っている。
世界を舞台に戦い続けた
弱冠20歳のアリーナ・サバレンカちゃんの夏が終わった。
このブログでは、何度も取りあげているベラルーシ20歳の超新星<アリーナ・サバレンカ>ちゃんだが、彼女が今夏にどれくらい試合を行ったのか、8月のスケジュールをまとめてみたので参考にしてほしい。彼女は脅威のビッグサーブ&ビッグストロークの持ち主であり、こんなタフな女性選手は他にいない。体力に限れば、女性版ナダルとも言えよう。
全米オープン4回戦では、大坂なおみちゃんが6-3, 2-6, 6-4のスコア2-1で、今回運良くサバレンカちゃんに勝利したが、もしサバレンカが勝利していれば、彼女が優勝していた可能性は非常に高い。今大会で、大坂なおみからセットを奪ったのはサバレンカだけであり、大坂なおみがインタヴューで「(サバレンカとの)この試合に勝てたのが一番うれしい」と答えていたように、それが正に本音であり、今大会を象徴した答えだろう。
サバレンカちゃんの熱くて短い夏は終わったばかりだが、彼女は今週からカナダのケベック・シティで始まったWTA280「国立銀行カップ(Coupe Banque Nationale)」に第1シードでエントリーされているが、何かアクシデントがない限り、彼女が優勝するはずだ。
女子テニスの世界は今、過去「パワーテニス」で圧倒してきた黒人アラフォー世代のウィリアムズ姉妹の時代が終焉を迎え、もうひとりの「パワーテニス」元女王で31歳の<マリア・シャラポワ>ちゃんのピークも過ぎ去ったとも言えるが、そんな「パワーテニス」を引き継ぐであろう次世代が、大坂なおみ(7位/9月10日付ランキング)とアリーナ・サバレンカ(20位/同ランキング)の2人なのだ。そう、ウィリアムズ姉妹の後継者が大坂なおみであり、シャラポワの後継者がアリーナ・サバレンカだろう。この若き20歳の両者が、女子テニス界のこれからの10年を牽引し、素晴らしい未来を築いていくと期待したい。大坂なおみちゃんは、メンタル面が安定すれば、彼女の快進撃は今後もずっと継続できるはずだ。
一方、アリーナ・サバレンカの武器は、大坂なおみ同様、ビッグサーブとビッグ・ストローク(誰にも打ち負けないパワーの強打は魅力だ)、そしてフットワークの軽さに他ならないが、彼女の特徴は、シャラポワ顔負けの「Scream(叫び声)」(笑)とポジティヴ・シンキングだろう。
最後に
9月に入ってもなお残暑は続いている一方、「映画の秋」に「美食の秋」、ここ東京では東京JAZZが「音楽の秋」の到来を、広島ではジャパン女子オープン(9月10日~16日)が「スポーツの秋」の到来を、
そしてニューヨークではファッション・ウィークが「ファッションの秋」の到来を強く印象付けた感じだが、
来月末からは「芸術の秋」を堪能できる<ムンク展―共鳴する魂の叫び>が上野の東京都美術館で開催される。
広島で開催中のWTA280「ジャパン女子オープン」(9月10日~16日)には、カナダ24歳の人気選手<ウージニー・ブシャール>ちゃん(世界ランク111位・元5位)が明日の1回戦(VS日比野奈緒)に登場する。
他にも、予選で3勝し、明日の本戦1回戦に登場するアメリカ17歳の超新星<アマンダ・アニシモバ>ちゃん(同134位)をはじめ、スロベニア20歳の新星<タマラ・ジダンセク>ちゃん(同75位)、そして本日行われた1回戦で勝利した・・・(キリオスのガールフレンド)アイラ・トムリャノビッチちゃん(同60位)、今週13日に24歳の誕生日を迎えるスロバキアのアンナカロリナ・シュミエドロバちゃん(同84位)も参戦している。そして来週から東京・立川で開催されるWTA470「東レ・パンパシフィック・オープン」(9月17日~23日)には、大坂なおみちゃんをはじめ、上位30位内のトップ選手(スティーブンス、キーズ、ケルバー、ガルシア、ムグルサ、プリスコバ妹、メルテンス、セバストワ、バーティ、スアレスナバロ等々)が多数出場予定だ。
Stop pressurin' me
Just stop pressurin' me
Stop pressurin' me
Make me wanna scream